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カバラ崎先生講義記録

カバラ崎先生講義記録第20回
『老いという快楽〜『衰え』の現象学的再解釈をめぐって』
ミョンモー国立福祉学院医学部特別養護老人施設『フロントラインの楽園』にて講演

 ふう。さて。本題に入りましょう。
 先進国…失礼、いろいろと余裕のある国では、『アンチエイジング』という概念が生まれて久しいようです。
 加齢にあらがう。人類の悲願ともいえる、「不老長寿」を、現代科学から検証しようという、そういった試みといってよいでしょう。
 ご老人方を前にこんなお話をするのは少々気が重くはありますが、『老化』とは、肉体の減衰にほかなりません。
 壮年期から老年期にかけての肉体の「衰え」を、いくつかこまかく挙げていきましょう

 視力・聴力の低下。
 筋力の低下。それに伴う姿勢保持・歩行等の困難化。
 代謝の低下。それに伴う各器官の機能低下と、加齢臭。
 感覚フィードバックの低下。それに伴う協応動作の困難化・平衡感覚の低下。
 認知機能の低下。それに伴う論理思考の困難化・記憶の混濁。

…これらは、ほんの一例です。
 他方、こういった気の滅入る現実をふまえ、生活を楽しもうという概念もまた存在します。『セカンドライフ』などと呼ばれる生活様式がこれにあたるでしょう。
 体機能に合わせた趣味や生活リズムを作り、そのなかで日々を穏やかに送る。
 現実をありのままに受容するという生き方ですね。
 しかし。この『受容』は、不十分なものであると言わざるを得ません。
 なんとなれば、『セカンドライフ』の前提に横たわるのは、『いかに老化という足かせの中で生活を作り上げるか』という、ある意味非常にネガティヴな命題だからです。
 私が学長を務める『私立生デザイン学院』の基本理念は、『精神が肉体を規定する』。そして『すべては許されている』です。
 器質的な変化を受容するということは、それをボトルネックとしてとらえるのではなく、積極的な価値としてとらえるということにほかなりません。
 こういった立場に立ち、わが学院では新しい『老い』のとらえ方を発信するにいたりました。

 先に述べた『衰え』の要素の数々。
 これらは、まったく別の状況下におかれた時に起こる症状でもあります。
 そして、その症状は、その状況下において、むしろ積極的に求められているのです。
 そう。ドラッグです。
 大麻・コカインなど、ドラッグによってもたらされる、いわゆる『トリップ』の状態。これは、老いの各症状とほぼ同じであるといえます。
 認知の異常、それに伴う思考・感覚の変化は、しばしば快楽としてとらえられるというわけです。

 ここにいたり、我々は、『ドラッグとしての老い』という概念の提唱を始めたのです。

 このように定義づけると、『老化』は、ドラッグカルチャーとして位置づくことになります。ドラッグカルチャーとしての老いを楽しむためのいくつかの技術を、次に見ていくことにいたしましょう。

 (弾)(掠)
うわ。
ええ。なんだかずいぶん戦況が悪化してきているようですが、このまま進めていきます。
まず、『体機能の低下』。ここでは、平衡感覚や協応運動の困難化という側面に着目してみます。
ここにいらっしゃる介護担当の方々も体験したかもしれませんが、『老人の視座から介護を考える』ための教材として、しばしば擬似的に老人と同じ感覚を味わってみるという手法が使われます。
これは、視界を遮ったり、各関節に伸展制限を付けたり、手足にウエイトを付けたりすることで老人がおかれている状況を再現しようという試みです。

ここで再現しようとしている「肉体の重さ」は、肉体が置かれている位置や体勢をとらえる感覚のフィードバック機能や、それを受けて肉体を動かす指令系統、そして駆動機関である筋肉の機能。入力・処理・出力の3つがそれぞれに低下するために感じられる感覚と言えるでしょう。
これを『ドラッグカルチャー』的視座から考えてみると、『自身の肉体の外に一度飛び出し、ままならない自身を操縦しなおす』という、一種の離人症的体験としてとらえることができるでしょう。



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