| 聞き手 :ええ、一週間のご無沙汰でした。ラジオごくたんぱ・『形成外科医のためのカタルシスアワー』、本日は放送500回を記念し、生デザイン学院学長、カバラ崎長一郎先生にお話を伺います。
カバラ崎:よろしくお願いいたします。
聞き手 :カバラ崎先生といいますと、やはり『趣味の肉体改変』というムーブメントを確立させた先駆者、そういったイメージで捉えていらっしゃる方も多いかと思うのですが。
カバラ崎:まあ、不本意でもあり、うれしくもあり、といったところでしょうか。
聞き手 :と、申しますと。
カバラ崎:本来私は、精神医学と逆の発想で形成医学の発展を図ろうという構想を持っているわけです。つまり、精神を肉体に合わせるのではなく、肉体を精神に合わせて改変する、という発想ですね。
聞き手 :はあ。
カバラ崎:人間の肉体の変化に、老いや病、事故といったある意味受動的なベクトルではない、主体的な変化の軸を加えてやろう、と。
聞き手 :なるほど。受容ではなく、能動的に肉体の変化を起こす、ということですね。
カバラ崎:そういうことです。
聞き手 :本日は、そんなカバラ崎先生が手がけられてきた患者さんを何人かスタジオにお招きしております。
カバラ崎:ほう。それはそれは。
聞き手 :まずは、これはもうカバラ崎先生の処女作にして金字塔といってもうよい、『ロマンチックナイト』を施術された方ですが…
カバラ崎:ああ。彼ね。彼とは亡くなられる前まで親交がありましたよ。
聞き手 :この、『ロマンチックナイト』と題された美容形成術について、お教え願えますか?
カバラ崎:彼は当時、対人関係に問題を抱えておりましてね。人前に立つと、顔面チックがとまらなくなるのです。私はそのチックの筋電位を利用して、『顔面にちりばめられた発光器官を一定の法則で明滅させる』というコンセプトで施術したわけです。

聞き手 :つまり緊張すればするほど美しく輝く対人恐怖症、というわけですね。
カバラ崎:そうですね。しかし残念ながら、彼は結婚後チックの消失を見ました。神経医学的には、『治った』わけですね。しかし新たに獲得した肉体の身体機能的には、『機能を失った』といえるわけです。
聞き手 :難しいところですね。本日は、なくなられた施術者のご子息をお呼びしております。
娘 :どうも…
聞き手 :実はご息女も、カバラ崎先生の患者さんだとか。
カバラ崎:ええ。そうです。
聞き手 :失礼ながら、光るほくろの方は施術なさっていないようですが…
娘 :間違ってます?間違ってました?私は場違いでした?たとえば全裸で図書館に本を返しに行くとか、しかも返却期限がぎりぎり3週間を超えてしまっていてしかられるとか、さらに月曜日だったので仕方なく返却ポストに放り込んで、良心の呵責に煩悶するとか、そのくらい間違ってます?はあはあはあ。ああ、はあはあはあ。
聞き手 :おお、
カバラ崎:そうです。彼女は赤面症ではなく、過呼吸があるのです。
聞き手 :なるほど。
娘 :はあはあはあ。
聞き手 :そしてこれは!ご息女の胸が豊かに膨らんでいく!失礼ながら先ほどは貧弱…いえ失礼、きわめてスレンダーだったお体が、いまやぴちぴちのグラマラスな肉体に!
娘 :はあはあはあ。
カバラ崎:彼女の過剰な吸気を排出する気道を、乳房をはじめとしたからだの各部に張り巡らせ、その先端に浮き袋状のガス貯留器官を作りました。つまり彼女は『緊張すればするほど美しく、肉感的になる』のです。
聞き手 :これはしかも過呼吸によって息遣いも荒く、目も潤んでなんとも…いや失礼。
カバラ崎:親子そろって、主体的に神経症を生きています。
娘 :はあはあはあはあ。
聞き手 :おおっと。チアノーゼが出始めています。ご息女には一度医務室へご退場願いましょう。
カバラ崎:さらにこの応用として、過呼吸の余剰エアをまとめてシリンダーに送り込む推進機関の開発も進めております。
聞き手 :ほう。つまり、『過呼吸ドライブ』というわけですね。
カバラ崎:先日のテスト運用では、20人の過呼吸を持つ施術者に30人の初対面の人々と同室してもらったところ、最大で1分間に1040キロワットの発電を記録いたしました。
聞き手 :神経症が世界を救う日が来るかもしれませんね。
カバラ崎:いいえ。それはないでしょう。
聞き手 :すばらしいですね。続きましては、超音波アデノイド『のど笛』の施術を受けました、この方です。
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